●本と中国の本当の姿を伝えたい―映画『北京の恋』(2007/11/08)
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京劇を学ぶため身分を偽って北京にやってきた日本人女性と、梨園に育った青年の恋を軸に、日本と中国の間に未だ横たわる戦争の残像という大きなテーマを描いた中国映画『北京の恋―四郎探母』(原題:秋雨、04年)が東京・銀座シネパトスで公開されている。

  主演は日本人ながら北京電影学院演劇科を卒業し、日本と中国のドラマ、CMなどで活躍する前田知恵と、中国の若手俳優、〓東(チン・トン)。中国では05年の日中戦争勝利60周年記念の式典でも上映されたこの作品は、それまで日本兵を「鬼」としか描かなかった中国映画の立ち位置を大きく変えた。「本当のことを伝えたかった」と語る同作品の監督、孫鉄(スン・ティエ)氏(=写真右上)に、この作品に込めた気持ちを聞いた。(〓は革へんに斤)

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――もともと、なぜこういう作品を撮ろうということになったのですか

孫:文化が違う中国人と日本人が、互いに理解し合うことが必要だと思ったからです。中国の若い人たちは中国と日本の過去のことをあまり知らないか、興味を持っていない。だから、本当のことに興味を持ってほしかった。2つの国の関係を語る上で戦争のことは外せないのですが、それだけではないでしょう? 2−3千年も前から交流があったわけですからね

  これまで、中国映画の中での日中戦争の描き方はあまり誠実ではなかったと思うんです。例えば、スピルバーグ監督の『シンドラーのリスト』のように、敵兵のずるいところも、いいところも描くべきだと思った。僕が子供の頃の中国映画の中で、日本兵はとてもこっけいに描かれていました。戦争は恐ろしいものというより、なんだか漫画みたいに面白いものという感じだった。だから僕らも戦争ごっこなんかして遊んでいたわけですよ

  日本と中国はやっぱり、仲良くしなければいけない。過去は過去。今の人たちに過去の責任を負わせることなんてできないんです。映画の中でヒロインの梔子(しこ、=前田知恵)は、自分の祖父が日中戦争時代に中国で経験した残酷な出来事をまったく聞かされていなかった。それを知ってしまった梔子は大きく動揺して「本当に知らなかったの!」と叫び、恋人となった何鳴(=チン・トン)は悲しさと怒りのあまり、家を飛び出してしまう。そんな時、何鳴の父親は「若い人の恋愛は彼ら自身の問題だ。私達が口出しすることじゃない」と語ります。私が伝えたかったのは、つまり、そういうことです。過去のことも、今のことも本当の姿を描くことで、「過去を忘れず未来に向かう」という流れを作りたかったんです

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――ヒロインに前田さんを選んだのはどうしてですか

孫:どうしても日本人の役者を使いたかった。彼女は中国語ができるというものありますが、なによりもまず、日本人の目をしていたし、日本人の雰囲気を持っていたからです。中国に1人でやってきた女の子の心細さを表現するのは、中国人の役者には無理でした。彼女は京劇の歌を歌うシーンがありますが、学校に通って1カ月も毎日毎日練習したんです。とても真面目でね、いい仕上がりになりましたよ

――日本兵が中国人を殴ったり殺したりするシーンが出てきますが、中国の人たちにとってこういうシーンは見慣れたものですか

孫:そうでもないんですよ。僕らが子供の頃のドキュメンタリー番組にはよくありましたけどね。映画では日本兵が中国人を殺すシーンを本当らしく撮るのにとても苦労しました。日本人にとっても中国人にとってもかなり衝撃的で、特に日本人の皆さんは観たらいやな気持ちになるシーンだと思いますよ。でも、戦争の残酷さを伝えるには、本当らしく撮る必要があったんです

――今、中国の若い人たちは日本のことをかなり知っているような感じがしますが、監督ご自身はどう感じていらっしゃいますか

孫:やっぱり、あまりよくは知らないですよね。僕の20代の息子でも、「戦争のことがあるから日本は嫌いだ」と言うんです。友達のレベルでは仲良くできるだろうけど、大きい観念の中ではやっぱり日本に対して嫌悪感を抱いている。結局、お互いを1人の人間と考えて実際にコミュニケーションしてみることが大事だと思うんですよね。【聞き手:サーチナ・恩田有紀】



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