●『ニーハオ トウ小平』−畏敬される指導者の条件(2007/04/29)
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 国が危機に瀕したとき、不思議に偉大な指導者が出現するものだ。幕末から明治維新にかけての日本、独立前後のアメリカもそうだった。そして中国共産党からは毛沢東、周恩来など、キラ星のように「大物」が出現した。

 ところが、「新中国」成立の立役者だった毛沢東が、年を経るにつれ「大躍進」や「文化大革命」などで国を混乱させてしまう。その死後、疲弊した祖国を建て直し、発展への道を築いたのがトウ小平だ。やはり「国貧しくして顕(あらわ)れた孝子」というべきだろう。そして4月28日に公開される映画『ニーハオ トウ小平』は、彼の歩みと思想を知るための格好の作品だ。

 日本人が隣の大国を率いる人物としてトウ小平を強く意識するようになったのは、おおむね1980年代からだ。一方、映画は若き日のトウ小平の姿も伝えてくれる。晩年の「したたか」な言動とはうらはらに、実に律儀そうで、演壇では緊張のせいか表情も固い。そして文化大革命中に失脚させられたときの「楽観主義だよ、毎日泣いてどうする」という言葉は印象的だ。その後の大胆さは、「地獄」を見た男の開きなおりだったのだろうか。


 中華人民共和国成立35周年の1984年、天安門広場を行進する北京大学生が自主的に掲げたという「小平ニン好(小平よ! こんにちは)」のプラカードは、中国の最高指導者に対するものとしては実に破天荒。彼に対する信頼がにじみでたものだった。もちろん、1989年の天安門事件などでは、国内にも不満の声があった。しかし総じていえば、民衆は彼に畏敬の念を抱いていた。

 映画では、彼の発言の面白さも紹介される。劇場に足を運ぶ意欲をそいでもいけないので、作品中のエピソードを1つだけ紹介しよう。米中国交樹立の際の話だ。記者団の「国内に反対意見はなかったのか?」との質問に、トウ小平は「あった」と回答。「共産党内部に意見対立か」と騒然となる記者たちに対して、もう一言。「我が国の一部、台湾の人々は反対した」と。

 単に面白いだけではない。ウィットも交えながら、短い言葉で自らの意思を明確に伝える技に長けていた。聞き手が思わず彼のペースに巻き込まれるようなフレーズを連発したという。

 経済関連では、深セン建設の躍動感あふれる映像も紹介。そして香港返還にかけた情熱。現在の中国の原点はトウ小平にあったと、改めて納得する。

 中国が記録映画として製作しただけに、宣伝臭がやや強く賛美だけが目立つという点はある。それでも、中国になんらかの形でかかわる人にとっては必見。特に、ビジネスパーソンにはお勧めだ。中華人民共和国成立から改革開放の本格化に至る歴史を学ぶためだけではない。「へこたれない」「強い意志を持つ」「明確に主張する」「頭の回転が速い」など、中国人が高く評価する人物像をじっくりと味わえば、彼らと接するためにも、大いに参考となるだろう。

 本作品はポレポレ東中野にて、4月28日から上映。モーニング&レイトショーで公開。12:30から19:00までの回は、「胡同愛歌」を上映。同作品は、昔ながらの北京の街に暮らす父と子の愛情を主旋律に、父の再婚問題で巻き起こる波乱を描く。庶民の心と彼らが直面する問題を伝えてくれる佳作だ。
(編集担当:如月隼人)

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