●気鋭監督チャン・リュルと『キムチを売る女』(2007/01/31)
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中国と韓国の合作アートフィルム『キムチを売る女(原題:芒種)』の上映が28日から渋谷シアター・イメージフォーラムで始まった。

 監督は中国の朝鮮族出身のチャン・リュル(張律、=写真)。長編デビュー2作目にしてカンヌなど世界各地の映画祭で14もの賞を受賞したこの作品で、中国北部の片田舎でキムチの露天商をしながらつましく生きる母と息子を描いた。乾いた質感の絵画的な映像――。映画音楽を排除し、ワンシーン・ワンカットを多用したストイックな演出で、暗い過去をひきずり、表情を捨てた孤独な母親の心を映し出す。

 06年12月に来日したチャン監督は、この作品が日本で上映されることを喜ぶと同時に、どんなどんな受け入れられ方をするか、やや心配な様子。エンターテインメント色の強い映画が人気を集める中国で、今作はまだ上映されていないのだという。

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 キムチを売る女、チェ・スンヒを演じたリュ・ヒョンヒは、吉林省延辺大学・舞踊学科の現役教授。映画は初出演だが、そのリアルな演技が絶賛を浴びた。一人息子のチャンホ役には、中国のテレビや舞台で活躍してきたキム・パク。

 2人を主演に選んだ理由をたずねると、チャン監督は「リュ・ヒョンヒは、きれいだけどとても寂しい目を持っていたから。でも、チャンホ役は実はなかなか決まらなかった……」と話し始めた。何人もの子役の中からキム・パクが残り、それでもまだ決心がつかないまま、撮影期間が始まってしまったという。

 「もう、しょうがない、という気持ちで彼を坊主頭にしてみたら、ちょっと、これならいけるかもしれない、という気持ちになってきた。それで演技をさせてみたら抜群によかったので、もう、迷いは消えた」

 出会う男たちに次々と利用され、次第に心を無くしていく母親の、唯一のなぐさめとしての存在である息子を、キム・パクはとても静かに、それでも印象深く演じきった。そんな息子が突然、彼女の前から消えてしまった時、母親は絶望の中で世の中を憎み、悲壮な決意のもと、ある行動にでるのだ。

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チャン監督は1962年生まれ。延辺大学中文科を卒業後、同科の教授をしていたが、天安門事件で教授職を解雇されたことをきっかけに、作家に転身した経歴を持つ。現代文学で注目されていたが、友人の映画監督との酒の席で、「映画なんて誰でも作れる」と大口をたたいたことから、映画の世界に身を置くことになったという。

 「確かに自分は朝鮮族で、この作品でも主人公が少数派の朝鮮族出身だということが意味を持っているけれども、民族にこだわるつもりはない。どの民族でもその血を持って生まれれば、生きていく上でいいこともも悪いことにも出会いますからね」

 今後は中国の様々な問題をテーマに、その世界を広げていくつもりだという。
【サーチナ・恩田有紀】

※『キムチを売る女』は韓国の芸術映画4本を次々と上映する「韓国アートフィルム・ショーケース(KAFS)」のオープニング作品として、渋谷シアター・イメージフォーラム(電話:03−5766−0114)にて上映中。配給支援:KOFIC 配給協力:タゲレオ出版+マジックアワー

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