●リッチーの初単独日本ライブは「いつもの場所で」(2006/12/13)
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〜ライブレポート〜「Richie Jen Concert 2006 in Tokyo」
■リッチー、新天地からの「再出発」
台湾の実力派アーティスト、任賢齊(リッチー・レン)は2005年、約9年間所属した滾石唱片(ロック・レコード)を離れ、EMI台湾に移籍。05年6月には新アルバムの制作を開始し、06年2月に移籍後第1弾となる『老地方(いつもの場所で)』をリリースした。そのリッチーが、12月8日に日本でコンサートを開くという情報はすでに10月の時点で伝わっていた。
06年11月から12月にわたって、中国政府・文化部は「日中文化フェスティバル」を開催。練馬文化センター(東京都練馬区)でのリッチーのコンサート「いつもの場所で」も、このフェスティバルの一環として企画されたものだ。翌年に国交正常化35周年を控え、日中が新たな節目を迎えようとするこの年に、ライブ名を移籍後初のアルバムタイトルと同じにしていることや、リッチーにとっては奇しくも単独で行う初の日本ライブであるところが、彼の新天地からの再出発を表しているようだ。
■ハプニングもライブの力に
それを象徴するかのように、1曲目は「再出発」でスタート。イントロががかり、黒のタンクトップと黒革のボトムに身を包んだリッチーがステージに姿を見せると、1階席のファンの一部が待ちかねて痺れを切らしたかのように一気にステージ下まで押し寄せた。
ならばスタッフが制止するか、さらに危険な事態になればライブ自体が中断することもある。ところが、リッチーは逆にステージ縁まで近づいて、ファンたちと次々と握手を交わした。香港や台湾のライブではアーティストがファンとスキンシップを交わすことは珍しくないが、それを日本でも屈託なくやってのけるリッチーはファンサービス旺盛だ。
「再出発」は台湾語の歌詞だが、北京語しかわからない人にもその力強いノリと前向きなイメージは十分に伝わり、ライブ最初を飾る曲にはふさわしい。1曲目で観客の気持ちをしっかりとつかんだリッチーは、続いて「浪花一朶朶」「春天花会開」と和やかな曲調のヒットナンバーを披露。歌い終わったところで、「危ないから自分の席に戻ってね、(ステージの)上から物が落ちてくることもあるからね」と呼びかけると、落ち着いた観客たちも自分の席に戻っていった。
■MCは日本語で、日本のファンにサービス
ライブの途中、リッチーが「ワタシは、歌がウマイです」「ワタシは、ハンサムです」「ワタシの日本語、ジョウズ」などユーモラスな日本語を織り交ぜたMCで、日本のファンを湧かせる。緩やかな一体感が会場内に漂い始める中、「我是一只魚」、そして「老地方(いつもの場所で)」とメロウなナンバーへ。曲の途中でも「ミギ、ヒダリ!」と腕を上げて左右に振るしぐさを求め、オーディエンスがそれに応えた。
さらに、日本でも公開されたリッチーの主演映画『星願 あなたにもういちど(99年)』で流れた「燭光」、張柏芝(セシリア・チョン)が歌った映画の主題歌「星語心願」と、日本のファンにも馴染みの深い曲を歌った。
会場内の一体感が高まってきていることを感じたのだろう。リッチーが「みんなの歌が聞こえないよ!」と叫び、次の歌のワンフレーズを口ずさんだ。オーディエンスがその先を歌う。そうして「依靠」が始まった。さびの部分で「もっと大きな声で!」と、リッチーがさらにオーディエンスを煽る。
自分の歌が海外でも受け入れられたことを実感したのか、ライブ前半のMCの中で「音楽に境界線はないよね」と語ったリッチー。その想いはライブ後半で弾けた。
■後半、中国テイスト、日本テイスト織り交ぜて
ライブ後半、リッチーはロックなファッションから変わって中国の伝統的衣装、長袍をまとって再登場、中国テイストあふれるナンバー「任逍遥」で幕を開けた。曲の途中でファンがリッチーに扇子をプレゼントすると、扇子片手に舞い踊るパフォーマンスを見せ、ファンは大喜び。曲のラストフレーズで最前列の観客にマイクを向けると観客も熱唱し、会場を盛り上げた。
そのまま中国テイストなステージ展開になると思われたが、その次にチョイスしてきた曲は「傷心太平洋」。中島みゆきの「幸せ」をカバーした有名な曲だが、リッチーは1番を歌い終わった後、2番からはなんとオリジナルの日本語で歌い上げた。
サプライズはそれだけではない。「傷心太平洋」の後のMCで、日本の歌の中での思い出の曲として「スキヤキ(上をむいて歩こう)」の名を挙げ、これまた日本語で(さびの部分を英語で)歌った。歌い終わった後に「(歌の最中に)間違ったところがあっても気にしないでね」と一言(ライブ後の記者会見で知ったことだが、日本語の歌詞は丸暗記で臨んだのだそうだ)。
次の曲は、同じく台湾の実力派ミュージシャンである陳昇(ボビー・チェン)作詞作曲の、メロディが優しく美しい「小雪」。イントロでリッチーが笛子(中国の横笛)を自ら吹く。長袍姿と相まってまた中国的な風情がステージを包んだ。
■そしてお待ちかねのあのヒット曲へ……
「小雪」を歌い終わると長袍を脱ぎ捨てて白のロングTシャツ姿になり、「心情車站」を、その後でギターとハーモニカを持ち、趙傳(チャオ・チュアン)の曲のカバー「我是一隻小小鳥」と、フォーキーな楽曲を奏でる。リッチーがライブ後の記者会見で「自分の音楽のルーツにはフォークミュージックがある」と語っていたとおり、彼が歌う曲には親しみやすい曲が多い。
そして、中華圏でメガヒットとなった「心太軟」が始まると、オーディエンスから一気に歓声が上がった。オーディエンスにしてみても、この曲を「待ちに待った」というところだろう。この頃になるとファンもリッチーに合わせて一緒に歌っていた。
そして、ラストを締めくくった曲は、「対面的女孩看過来」。曲が始まる前に、リッチーと一緒に「ミギ、ヒダリ、ウエ、シタ」とウォーミングアップを済ませて(笑)、会場全体が一緒になって歌い、踊った。アンコールでは「永不退縮」でオーディエンスに応え、これまた中華圏では広く親しまれている〓麗君(テレサ・テン)の「月亮代表我的心」を合唱して、1時間半のライブが終了した。(〓は登におおざと)
■ライブを終えて
1時間半が短く感じられたが、アンコールを入れて18曲を披露したリッチー。大勢のファンに支えられて初の単独来日ライブは成功裏に幕を閉じたといえるだろう。これを機に、日本での活動が増えてくれれば、ファンとしては何も言うことはない、というところだ。
リッチーは歌手としてだけでなく、俳優としても活動している。ライブ中のMCで「『星願』見たことある?」と質問していたが、『星願 あなたにもういちど』のほかにも成龍(ジャッキー・チェン)主演の『ゴージャス(原題:玻璃樽、99年)』や『ブレイキング・ニュース(原題:大事件、04年)』など、彼の出演作は日本でも上映されている。
華流のきっかけも、F4主演の『流星花園(花より男子)』が示しているようにドラマから始まったことを考えれば、俳優としてもっと活動したほうが日本での露出度が上がるかもしれない。でもやっぱり、歌手としてのリッチーをもっともっと見たい、と僕は思うのだ。
(Text by 葉月野)
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