●経産省担当者に聞く、日中映画共同製作の今後(2006/11/07)
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〜日中映画共同製作ワークショップ開催〜
10月27日、東京・ホテルオークラにおいて「日中映画共同製作ワークショップ」が開催された。これは日中の映画製作者が互いに企画を持ち寄って、共同製作の可能性を探るという商談のニュアンスも強いワークショップだ。第1回は06年8月3日に北京で開催され、今回は2回目の開催となる。日本の経済産業省(経産省)・日本映像国際振興協会(ユニジャパン)と中国の国家ラジオ映画テレビ総局・中国電影合作公司の共同開催という形だが、企画は日本側からもちかけたものだという。企画実現のために奔走した経産省・商務情報政策局メディアコンテンツ課の青崎智行氏にお話をうかがった。
■なぜ「日中」なのか
――青崎さんは中国方面のご担当なのですか?
私の主な担当はコンテンツ産業の国際展開支援政策ですが、アニメ、音楽、そして映画など各業界で「中国とやってみたい」「中国と何かできるんじゃないか」という期待感が高いと思われます。そうしたニーズに対応していくうちに…
――中国に行き着いてしまった?
やはり中国市場の潜在性が大きいということではないでしょうか。
■日本映画の現状と今後の展望
――そもそもなんですけど「コンテンツ振興」ということで日本の映画界を経産省としてどのように認識し、今後どういった方向へ持って行きたいとお考えなのでしょうか?
もともと経済産業省がコンテンツ産業振興を図る中で、国際展開支援政策は一つの柱になっているわけですが、その中でも、今年度は映画を中心とした映像産業の国際共同製作支援の推進を実施しているところです。
その背景には、コンテンツビジネスの国際化が進んでいる中で、日本の映像産業がさらに国際化していくことによって、国際共同製作という具体的なプロジェクトを通して、人的なネットワークが構築され、ビジネスとしての商流も構築され、そして、最終的には市場が海外にも生まれていく、というメカニズムを構築していくことを支援できたら、という発想があります。
同時に、国際共同製作を通してノウハウが蓄積されていくことにも期待しています。もちろん日本の俳優、最近も高倉健さんや真田広之さんが中国映画に主演したり、ハリウッド映画にも日本の俳優が少しずつ進出したりと、実演家レベルでの海外展開、国際進出が先行して進んでいるという現実はあると思いますけれど、もう少し広い範囲の製作レベルにおいても、そういった国際化が進んでいく可能性があるのではないか、というのが我々の考え方です。
■世界に目を向けた作品を
――それでは日本国内の製作現場で良い作品を作り出せるような支援をするということではない……
そうした領域に関してはまた別の施策、例えばインターンシップですとか、人材育成面の支援政策等を実施しています。ただ、そもそも今回、国際共同製作を支援するにあたってはワークショップに参加する企画のレベルでユニジャパン(財団法人 日本映像国際振興協会)が募集をかけて、寄せられた企画を選考するという審査機能が働いています。
応募する側、選考する側がいて、選ぶ、選ばれるという過程の中で少しずつ、国際的な視点から企画をたてる「練習」というか、「機会」を提供できるのではないでしょうか。日本のマーケットと国際マーケットが分断されているということがしばしば指摘されますが、こうしたプロジェクトを通じて、もう少し両者の間に調和が生まれるのではないかという期待は持っています。
――支援の対象となるのはより世界に目を向けた作品であり製作者であると。
そうですね。ここ数年、邦画が活況を呈しているわけですから、活況を呈しているところを支援するというよりは、違ったところに目を向けている人を支援する、というのがこの国際共同製作支援政策の考え方です。
日本のマーケットは世界第2位の市場ですから、まずは国内市場においてよい形で競争が活発になることが大切です。それに加えて海外にもさらに市場を獲得していくことが求められると思います。経済産業省の政策として、東京国際映画祭に併設されたマーケットである「TIFFCOM」を支援しているのも、国内産業と海外市場との架橋を進めたいという考え方によるものです。
――世界に目を向ける中で、まず近い中国で、ということでしょうか。
中国というのは、映画業界の方々からもよく伺うことですが、中国マーケットの潜在性や文化的近接性ということもあるでしょうし、実際、中国の映画に日本の俳優が多数出演していたり、そもそも歴史的にみても、1970年代後半から1980年代前半にかけて『君よ憤怒の河を渉れ』に代表されるように日本の映画がかなり中国でヒットしていたという事実もあるわけです。やはり中国に対するいろいろな角度からの期待感、中国との交流に対する期待感とニーズがあるということが一番の要因ですね。
■日本映画活況の理由
――日本映画が活況を呈するようになった要因はどのようにお考えでしょうか。
難しい質問ですね。例えば、日本には約3000スクリーンありますが、シネマ・コンプレックスなどの登場によって、スクリーンが増加した中で、観客の入りが多ければすぐに隣のスクリーンを空けて同時に上映するというようにヒット作が優先される傾向が顕著になっていると思います。このことは、観客の嗜好、動きに即座に対応しながら映画を提供していくユーザーオリエンテッドなシステムになってきているとも言えるでしょう。
このため、ヒットする作品とそうでない作品の興行成績の差が広がりやすい「優勝劣敗」の構図が明確になってきてもいると思います。ただ、そうしたシステムが浸透してきたことによって、観客側に立った視点、つまり市場でどこにニーズがあるのかという視点がメカニズムとして利きはじめているということが観客数増加のひとつの大きな要因だとは思います。
そして、狭義の映画界以外の産業界から映画ビジネスに参入する動きも日本の映画産業を活性化させている要因のひとつだと考えられます。例えば90年代末に、フジテレビの「踊る大捜査線」で大ヒットが記録されたように、テレビ局などが映画製作に、80年代から行われていはいましたけれども、ここ数年あらためて本腰を入れてきている。それがうまく、例えば、テレビシリーズを映画化して、映画がヒットする。あるいは映画がヒットしたものをテレビ化してみるといった手法などがマーケットを支え、創り出しているという側面は見逃せないでしょう。
――そういったことが熟成してきたということでしょうか。
熟成なのか、別の形があるのか分かりませんが、(国際共同製作によって)更にプラスアルファ、アドオンしていくための可能性を考えていきたいということですね。既存の、いい状態にある、いい方向に向いている市場があって、更にそこにプラスアルファ、アドオンして他の市場を取っていくということでしょう。
日中の映画製作者が互いに企画を持ち寄り、共同製作の道を探る
■ワークショップの目指すもの
――今回のワークショップを取材させていただいて、すごく活気があったと思うのですが。
これまでそうした「場」があまり存在しなかっただけで、専門家どうしがテーブルにつくと非常に盛り上がるんだということを痛感しました。
――こういったワークショップはいろいろ行われているものなのでしょうか。
研修という形では行われています。ビジネスプレーヤー同士を引き合わせて、マッチングというよりは交流しながら研修していくという事業は頻繁に行っています。そうした研修事業は漫画、アニメ、音楽など様々なジャンルで行っています。
――では今回は、その映画版という位置づけですか
いえ、映画の国際共同製作ワークショップに関しては、企画を募集する段階を含め、商談会を実施したうえでフォローアップも行っていますので、研修とは異なるレベルの支援事業であると捉えています。さらに中国を対象としたワークショップ以外に欧米諸国とのワークショップも実施しているところです。
――今後この「日中映画共同製作ワークショップ」がどのように発展していって欲しいですか?
具体的に企画案件が共同製作としてスタートし、資金調達、脚本、撮影など様々なレベルでの共同作業が行われ、完成して上映にまで到達できる作品が生まれてくると嬉しいですね。まずは日中間で、お互いのマーケットにおいてビジネスが成立するような作品が生まれ、更に他の諸外国市場でもビジネスになる、あるいはいずれかの国際映画祭で賞を取る、といった展開につながっていくといいと思います。
――最後に、最近ご覧になった映画は?
中国の作品ですが『瘋狂的石頭(クレイジー・ストーン)』は内容的にも興行的にも興味深かったです。低予算で大ヒットとなったため中国の映画振興政策担当者も驚いていました。
(聞き手・構成:菊池真一郎・恩田有紀)
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