●台湾映画『夢遊ハワイ』トニー・ヤンの「青春時代」って? (2006/09/07)
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台湾の若手注目俳優・楊祐寧(トニー・ヤン)が現在、日本で公開中の主演映画『夢遊ハワイ(原題:夢遊夏威夷)』を語るインタビューの後編。この作品には本物のハワイの風景は出てこないけれども、兵役や檳榔(ビンロウ)売りの女の子とか、初めて観るのになぜか懐かしい台湾独特の景色、そして、将来に抱く漠然とした不安やら、届かない恋心といった誰もが経験したことのある痛みがたくさん詰まっているのです。
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――兵役中の若者たちの話ですが、トニーさん自身は兵役は?
「僕は学生なので、まだ行っていません。でも、映画の中でのシーンは周りの人曰く、かなり本当の軍隊生活に近いみたいですよ。撮影スタッフのほとんどは兵役を経験しているので、いろんなことを教えてくれました。ネズミで遊んだり、新人をいじめたりって、兵役に行った人ならだいたい体験しているらしいんです(笑)」
――トニーさんが演じた阿洲(アーチョウ)の小学校の同級生、陳欣欣(チェン・シンシン)は大学受験に失敗して精神を病んでしまいました。台湾の受験戦争はやっぱり、相当厳しいんですか?
「ちょっと前は、本当に厳しかったみたいですね。でも、だんだん簡単になってきているらしい。今では『合格しない方が難しい』とか。僕自身はそんなに勉強ができる人間じゃないから、受験が原因で変調をきたしたとかいう経験はなかったんですが……。周りの人に言わせると、僕はもうかなりヘンだと(笑)。仕事が忙しくてしょうがなくなると、事務所で大声出したり、歌いだしたりするので……。」
――え〜?! 大声で歌っているトニーさん、見てみたいですね。
「夜にはそうなる確率、高いですよ。今はまだ日が高いんで……(笑)。ともかく、勉強にしても、仕事にしても、僕みたいに何かしら、発散できる場所があれば、精神を病んでしまうところまではいかないんじゃないかな」
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――ところで、『夢遊ハワイ』は青春映画、と呼ばれていますが、トニーさんが「あの時が青春だったなぁ!」と思うのはいつぐらいですか?
「みんな、青春といえば16−17歳をイメージしがちですが、実は本当に純粋だった『青春時代』って、もっと小さい時じゃないかと思います。大きくなるに従って世の中の約束事とかが分かるようになると、ラブレターを書いたり、花を贈ったりとか、他の人と同じことをするようになるんだけど、小学生の頃って本当に純な行動をする。
僕なんか、好きな女の子がいて、その子に『好きな子いるの?』って聞かれたら口では『いないよ!』って言っておきながら机の下で彼女のことを指差していたりとか――。初恋だったのかも知れないけど、お付き合いするでもなく。あれこそ青春、だったんじゃないかな」
――そんなシーンに似た純な気持ちがたくさん詰まった『夢遊ハワイ』。この作品を観客として観た時、一番好きな場面は?
「演じている側なので、どのシーンが好き、というのは言いにくいですね……。04年の東京国際映画祭での上映から数えて、今まで11回も観てきたんですが、とてもシンプルな映画で、観る人をその人が純粋だった頃に連れ戻しちゃうような力があると思う。時には甘酸っぱい感じがしたり、ちょっと楽しい気分になったり、感動する場面も、阿洲と(軍隊仲間の)小鬼(シャオグェ)の関係だったり、陳欣欣とバスを待っているシーンだったり、花蓮の海辺での花火のシーンだったり、観るたびに違うんですよね」
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――では、これから役者として挑戦してみたいことは?
「今まで、『こんな役をやりたい!』とあらかじめ考えたことはなかったんです。5年前には自分が俳優やるなんて考えてもいなかったし。今でも、これから自分はどうなるんだろう?っていう期待感を持って仕事をしています。
ただ、次に出る映画は30年代の上海のマフィアの世界を描いたもので、自分もその一員の役なので、今までの作品みたいな明るい青年とは違う僕の一面をお見せできると思いますよ」
◆◆夢遊ハワイ(原題:夢遊夏威夷)◆◆
軍隊からの退役を控えた阿洲(アーチョウ)はある夜、小学校の同級生の女の子・陳欣欣(チェン・シンシン)の死を夢に見る。阿洲はその夢が何かの暗示だと思い、彼女に会いに行こうと考えていた。そんなある日、軍隊の新人の脱走事件が起こり、阿洲と仲間の阿洲(シャオグェ)にその行方を追う任務がまわってくる。
休日という名目で脱走兵探しをする2人。阿洲は気になっている陳欣欣の実家を訪ね、彼女が精神科病院に入院していることを知って会いに行く。病院から抜け出し、阿洲についてきてしまった陳欣欣。そして3人は脱走兵の実家がある台湾東部の海辺の町・花蓮へと向かうのだった――。作品は06年9月2日から東京・新宿武蔵野館ほかで順次、公開になる。
(編集担当:恩田有紀)
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