●映画『ココシリ』雄大で過酷な自然と男たちを描く(2006/07/20)
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90年代前半、密漁により絶滅の危機に瀕したチベットカモシカ(チベットレイヨウ)を守るべく結成されたマウンテン・パトロールの過酷な活動を描いた映画『ココシリ』が現在公開中だ。
マウンテン・パトロールの一員が殺害される事件が発生、密猟グループに対する決死の追跡が開始された。クルマの轍(わだち)や目撃証言、チベットカモシカの遺骸などの痕跡をたどりながら、徐々に密漁グループに迫るパトロール隊。しかし食料は尽き、クルマの故障で隊の分断を余儀なくされる。数々の仲間を失いながらも苦難の末に密猟者を追い詰めるが――。
この映画の見どころの一つに、美しくも厳しい、そして雄大な風景がある。しかし圧倒されたのはむしろ、大自然に負けない役者達の「顔」だ。パトロール隊も密猟者に協力する地元民も、キレイ事だけではすまない「貧困」という現実を生き抜いていく意志が表情だけで伝わってくる。この作品で重要なのは、マウンテン・パトロールと言っても公的な機関ではないこと。あくまで地元民たちによる私的な“ボランティア活動”であり、常に資金難という問題に直面している。密猟者とパトロールは貧困というキーワードで表裏一体の存在なのだ。
しかし、彼らの表情を見ているとその表裏は決して覆らないことを確信できる。お金を儲けるために生きるのではなく、生きるための資金を稼ぐという自尊心溢れる顔つきなのだ。
■巡礼バスで出会ったチベットの人々
映画は今のチベットをリアルに映していた。舞台となるココシリはダライラマ14世の生まれた青海省に位置する。チベットではアムドと呼ばれ、遊牧も盛んなこの地域は、大草原と碧空がどこまでも続く美しい自然が広がっている。
スクリーンに広がる自然を見ながら留学中に乗ったラサまでの巡礼バスを思い出した。大型トラックの荷台に70人ほどがひしめき合った巡礼バスは、みんな体育座りの状態でラサを目指し何日も旅をする。大半の乗客はチベット語を話していたが、沿線の街から来た者や街の中学校に通ったことがあるという者は片言の中国語を話していた。
ラサまでの道中は険しい山やでこぼこ道が続き、時折ひどい場所にさしかかると乗客を全て降ろす。そして牧民と思われる屈強な男性乗客らが自ら、重い石を運び道をならしていた。同乗者が互いに助け合ったり、夜は故郷を想い歌ったり、時に陣地争いで喧嘩になることもあった。ここの人たちは、一見乱暴にも見えるが、感情が真っ直ぐだ。
バスはたくさんの田舎町を通過するが、しばしば町の手前で乗客を降ろした。私たちは町まで歩き、少し休憩して、町を少し出たところでまた乗車する。なぜこうした行為をするのか始めは分からなかったが、それは町にある違法車両を取り締まる検問を通過するためにしているのだと気付いた。聖地へと向かうこのバスは、実は違法積載の巡礼バス(トラック)だった。悪路を延々と走り密猟者を追い続けたマウンテン・パトロールを思わせる巡礼バスの旅だった。
「命を掛けても守る」というあのパトロール隊の男たちの強い意志が、チベットの壮大な自然の美しさや厳しさに重なる。冬のチベットに行くと朝日が昇り、ただ太陽の光が温かいのが嬉しくてたまらなくなるように、かの地の人々の心にある怒り、悲しみ、祈りといった感情が、美しい自然にとけこんで、淡々と伝わってくる作品だ。(編集担当:菊池真一郎・中田美佐)
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