●実力派監督・張楊、永遠のテーマ「父と子」の絆語る(2006/06/30)
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 『こころの湯』や『スパイシー・ラブスープ』など大ヒット作を生み出した、中国のニュージェネレーションを代表する実力派監督の1人、張楊(チャン・ヤン)監督(=写真)の最新映画『胡同のひまわり』が7月8日、日本で公開される。

 都市化の進行に伴い、人と人とのつながりが疎遠になったと懸念する監督は、今作を通して、取り壊しが進む北京市の古き良き街並み「胡同」に対する危機感と親子の永遠のテーマとも言える、父と子の絆をみずみずしい映像で描写した。このたび、子役の張凡(チャン・ファン)と共に来日し、インタビューに答えてくれた。

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■“天才子役”発見!

――映画初主演ながらも、堂々と演じきったチャン・ファン。彼を選んだ訳を教えて下さい。

 実は彼は数万人の子供の中から選びました。まずはキャスティングのために、2カ月をかけて60カ所くらいの学校を回りビデオ撮影をしてきました。そのビデオを見ながら、素質のありそうな子供を選んで助監督が会いに行きました。この段階で20人くらいに絞られましたね。

 次はカメラテストです。ここで重要だったのは、映画が3つのパートに分かれているため、上の2人と似ているかどうかということでした。そして、泣く演技ができるか。チャン・ファンはカメラの前では涙を流しても、「カット」という声を聞けば一瞬で笑顔に戻るのです。芝居の切り替えができる、つまり演技の才能がある、と感じました。

■取り壊しが進む胡同

――18歳まで胡同に住んでいたという監督ですが、忘れられない思い出はありますか?

 70家族くらいが一つの大きな四合院(※)に住んでいました。子供も多かったのでみんなで遊ぶのがとても楽しかったです。屋根を走り回ったり、昔ながらの遊びをしたり。それに四合院ではトイレも水も共有で、人と人との生活がとても密でした。

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■父と子のあるべき姿

――映画の中の父親をどんな想いで描いたのですか。

 エンディングで父が家族の前から姿を消すシーンがありますが、実は私の父も以前、「どこか遠くに行ってしまいたい。出家して和尚さんになりたい」などと漏らしていたことがありました。世の中の父親が、「自分が納得できる理想の世界を求めてどこかへ消えていく」という気持ちを盛り込んでいます。

――自伝的とも言われるこの作品ですが、監督とお父さんとのご関係は?

 私と父の間にも映画と同じように解けないわだかまりがあります。それは今に至っても同じです。いつも共通の話題を見つけてコミュニケーションを取りたいと考えていますが、なかなか。うまくやっていけるか不安ですね。

――それでは、父と子はどうあるべきだとお考えですか。

 信頼関係がとても大事です。友人のような関係を築き上げることも大切でしょう。それから、父は子供の人格や選択を尊重するべきです。

 撮影中にスタッフの間で「父親(中国語でも父親)」と「お父さん(〓〓)」の概念の違いが話題になりました。結論としては、「父親」は子供が崇拝する対象、「お父さん」は子供を養って可愛がる人、という違いがあることで話はまとまりました。(〓は父の下に巴)

――ちなみに、お父さんも映画は見られたのでしょうか。

 はい。2回見てくれたのですが、初めて見た時は2カ月間口をきいてくれませんでした。後で母親に聞いたのですが、映画の中の父親が自分と重なっていると思ったらしいです。小さい頃、私に厳しくしたのを私がいつまでも恨みに思ってこの映画を描いたと感じたようですね。でも2回目に見た時は、「いい映画だね。息子の父に対する理解や思いやりが感じられる」と褒めてくれました。

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 監督はとにかく饒舌。初来日のプレッシャーからか疲労の色も見えたチャン・ファンを気遣いながら言葉を足す場面もあった。過密な取材スケジュールの中のインタビューだったが、監督は疲れを全く顔に出さず、一言一言、言葉をかみ締めるようにして、この作品に託した想いを語ってくれた。

 『胡同のひまわり』は7月8日、Bunkamuraル・シネマほか全国の劇場で順次ロードショー。(Text By 田村まどか)
 
※四合院……中国の伝統的な建築様式。北京市では、狭い路地に肩を寄せ合うようにして民家が建つ「胡同」に見られる。

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