●華流開花宣言!(その1)F4人気の源流とは?(2006/04/03)
(C)サーチナ&CNSPHOTO
台湾、中国、タイ、シンガポール。そして日本。各地の名前が書かれた看板や横断幕が会場前の至るところに飾られ、その前で写真を撮りあうファンたち。ここは香港コロシアム。今日は台湾の人気アーティスト4人組、F4の3年ぶりとなるコンサートの初日だ。
3年前と比べ、日本からの観客がずいぶん増えている。何人かの日本人ファンに聞いたところ、アジア・アーティストのコンサートは初めてという人も少なくない様子だ。
「F4(エフ・スー)、F4……!!」。待ちきれないファンの連呼の中、会場の明かりが落ちる。ゴンドラがゆっくり天井から下りてきて、4人の姿が見え始める。その瞬間、歓声と共に客席の無数のペンライトが、星のようにゆれる。
ステージは会場中央にあり、四方を囲む客席に各メンバーが近づくだけで、ファンは一斉に前方へと突進。運よく握手ができれば、跳び上がって歓ぶ。メンバーがダンサーと絡む、客席に手をふる……、彼らがすこしでも動けば、叫び声が会場に響く。
長身でハンサム揃い、しかも各人のキャラクターが重ならないところが、幅広いファンを集めるゆえんだろうか。一方で、スターでありながらあまり気取ったところが感じられない。身近にいる人、と思わせてしまうような力も彼らにはある。
彼らのしゃべりは基本的に北京語だが、広東語曲も何曲か歌う。ファンもどの言語でも覚えているのだろう、ずっと一緒に口ずさんでいる。そしてステージ上方のスクリーンでは、アジア各地のファンのコメントが、色々な言語で流れる。そう、彼らはまさに「アジア」のアイドルだ。
日本の人気コミック『花より男子』を原作として作られた台湾のTVドラマ『流星花園』が放送されたのは、2001年。瞬く間に大ヒットとなりアジア中の人気者となったのが、ドラマの主人公4人組、すなわちF4だ。ドラマからそのまま抜け出した「イケ面」グループF4はCDも発売、アジア全体で400万を越える売り上げを記録する。
このドラマは十数カ国で放送され、いくつかの視聴率記録を塗り替えた後、当然のように『流星花園II』も制作されヒットする。活動はそれだけにとどまらない。メンバー一人一人がタレントとして活躍しても、多くのオファーが集まる。テレビは言うに及ばず、映画、写真集、そしてソロCD。最初のドラマ放送からまだ5年というのが信じられないほど、4人の名前がクレジットされた作品は数多い。
アジアの他国に遅れること3、4年となるのだが、まるで時間差でやってきた津波のように、今、そのF4人気が日本に押し寄せている。
1990年代後半から映画『シュリ』などでその兆候が見られ、今世紀に入ってから「ヨン様」で決定的となった「韓流」。韓国の歌手や俳優が、日本で「アジア発のエンターテインメント」というイメージで強さを誇っているが、80年代から90年代は中華系がその地位を占めていた。成龍(ジャッキー・チェン)や周潤発(チョウ・ユンファ)などの映画から、王菲(フェイ・ウォン)や張国栄(レスリー・チャン)などの音楽に至るまで、アジア・アーティストといえば香港を中心とした中華圏のタレントが中心だった。
こうした流れでみれば、中華圏の逆襲とでもいえるのが、ここ1、2年文字にされることが多くなった「華流」だ。映画ではさすがに老舗・香港が『少林足球(邦題:少林サッカー)』『無間道(邦題:インファナル・アフェア)』シリーズなどでその強さを見せているが、こと音楽となると、台湾が俄然クローズ・アップされる。
香港の祖国返還に合わせたかのように、1997年頃から台湾アーティストが香港と中国本土での活動に幅を広げ始め、「中華ポップスといえば香港」という牙城が崩れ始めた。一般のファンが、コンサートからカラオケに至るまで、北京語で歌う台湾アーティストを自然に受け入れだしたのである(中国本土のアーティストは、現時点で香港と台湾ではまだ、それほど受け入れられていない)。
「華流」が、時に台湾芸能ブームを指した「台流」とも表現されるのは、こうした台湾アーティストの強さが際立つからでもある。今の「華流」のメインストリームとなっている台湾アーティストの活躍を含めて、中華圏アーティストの現況を俯瞰してみたい。(Text&Photo by ささもと・ゆうじ)
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