●張芸謀(チャン・イーモウ)『単騎、千里を走る。』が映し出す中国(2006/02/04)
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 現在公開中の日中合作映画『単騎、千里を走る。(中国語タイトル:千里走単騎)』。監督の張芸謀(チャン・イーモウ)は、この映画の主役に、長年の彼のアイドルである高倉健を招いた。そのほかのキャストは、すべて中国の普通の人々。いったいどうやって彼らを導き、これほどの大作を創り上げたのか。監督に聞いた。
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――高田が雲南の奥地まで迎えに行った少年「ヤンヤン」役(=写真右)に、あの子供を選んだのはなぜですか?
 子役を選ぶのに、雲南の麗江市で助監督たちが撮ってきた映像などをもとに、8万人もの子供のオーディションを行いました。結果として選ばれたあの子は、実は最初に見た映像の中のグループだったんです。でも、もっといい子がいるのではないかと思って、それから大勢の子供の映像を見て、その上で高倉さんに5人の子役候補の中から決めてもらおうとしました。
 それで、もう一度最初のグループの映像を見直したとき、「この子しかいない!」と直感したんです。最終的に、高倉さんにはその子供の映像だけを見せました。高倉さんも「この子はいいね!」と言ってくれました。高倉さんも、その夜は興奮して寝付けなかったそうです。
 素人の役者たちで映画を撮ることは初めてではありません。役者を選ぶのに一番大事なことは、自分の感情を表現することができるか。それができる人ならばもう、脚本の中のことが真実だと信じるだけでいい。プロの役者よりもいい演技をすることもあるんです。
 彼らは嘘をつけないし、自分の本当の姿を見せるだけです。だから、映画の中の役柄の職業と本当に同じ仕事をしている人から選びます。
 実は高倉さんは脚本を見た時点で、この映画では泣かない、感情を抑えることで表現しよう、と話していました。でも、高倉さんの方が共演者たちの演技に感化されて、思わず泣いてしまった部分がある。そんなときは高倉さんに、「すみません、監督」と謝られました。
――作品の中で不思議に思ったのは、映画の中に出てくる中国人がみんな、善良だったことです。どこの国に行っても、旅人に対して悪いことをしようとする人はいるものだと思うのですが?
 悪人を描かなかったのは、この映画で伝えたかったのが、「人間のもっとも素朴で普通な感情」だったからです。もちろん、旅人はよく騙されたりします。でも、いい人に出会う確率は、悪い人に出会う確率の何倍も多い。この映画の中に、人の感情を傷つけるような要素を入れ込んだらまた違う方向に行ってましますから、敢えて入れ込みませんでした。
――今回の撮影で、高倉さんに「こんな風に演じてください」とお願いしたことはありますか?
 まったくありません。脚本の段階で詳しく話し合っていたので。それから、逆に高倉さんから「もっとこうやって演じようか?」と提案してくださったり、とても助けていただきました。
――映画の中には、日本人が見たことのないようなシーンがたくさん出てきましたが、その中で監督が日本人にいちばん見せたかったのはどのシーンですか?
 麗江の古い町の風景、雪を頂く山、そして高田とヤンヤンが迷子になった「土林」など、雲南には美しい風景がたくさんあります。それを見せたかったですね。それからなんといっても、高倉健さんの姿です。素朴なストーリーの中に、国を超えた、人間の心と心のふれ合いを込めました。
――監督のアイドルである高倉さんを主演に招くということで、監督も一緒に演じようという考えはありませんでしたか?
 それは考えたこともなかった(笑) 昔は俳優もやりましたが、実は演技は好きではないんです。やっぱり、自分は監督としてかかわる方がいい、と思いました。
――今後、また高倉さんと映画を撮る予定はありますか?
 またやりたいのですが、高倉さんは日本人だし、中国人の役は演じられない。その彼を迎えて、どのようなストーリーができるか? かなり難しいでしょう。さらに深みのある脚本が必要ですね。(聞き手・構成:恩田有紀)
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